携帯電話事業のauブランドも手掛ける日本の大手電気通信事業者KDDIは、大手のインターネットサービスプロバイダ(ISP)であるBIGLOBE(ビッグローブ)を、日本産業パートナーズから近々買収する方針を固めました。
すでにKDDIは富士通からニフティの買収交渉に入っていると言われていましたが、ビッグローブも傘下に収めるとなると、主にひかり回線やADSL、MVNOを含む格安携帯事業など日本のインターネット業界の集約がさらに進むことになります。
BIGLOBE(ビッグローブ)の買収金額は700~800億円
KDDIがビッグローブを買収するとなると、その資金は最低でも700~800億円前後になるのではないかと見られています。同じインターネット通信事業者であるニフティの買収金額は(200~300億円)、もし報道の通りに企業買収が行われるとなると、その規模は総額で1,000億円程度になります。
KDDIでは将来、日本の人口が減少していく中で収益を伸ばすため、携帯・ネット通信事業以外の分野(保険・医療・電気・物販)を買収、もしくは業務提携することで事業拡大を図っています。KDDIの田中社長によるとM&Aの予算は最大で5,000億円規模としておりビッグローブ、ニフティの買収計画もその一環でしょう。
高止まりする携帯電話料金の値下げは絶望的に
今の大手通信事業者は儲けた利益を設備投資に回すのではなく、企業買収の資金に充てています。消費者の支払う携帯電話はスマートフォンで月額平均7,000~8,000円と、ガラケー時代に比べ約2倍に負担が増えています。
そのおかげでKDDIやソフトバンクの営業利益は右肩上がり。
儲けた利益を通信費の値下げ、混雑緩和のための帯域増強などユーザーに還元されれば良いのですが、最近はM&A(企業買収)に資金が使われることが多い気がします。
※ソフトバンクでもこれまで日本ボーダフォンの買収1兆7,820億円、米スプリントの買収1兆8,000億円。そして2016年7月に発表した英国半導体設計大手アーム・ホールディングスの買収3兆3,000億円。
買収費用のすべてが消費者の支払う通信費で賄われている訳ではないのですが、こんな状態で大手の通信会社が携帯電話料金の値下げに応じるとはとても思えません。
それどころか投資事業が失敗したらそのツケの支払いは、ユーザーに降りかかってくると思います。
今後も大手携帯電話各会社の経営戦略としては、利益が減るような値下げではなく利用者から更なる搾取をして儲ける方を優先するでしょう。(私が経営陣や大株主なら絶対にそういった経営方針を取る。)
格安スマホ事業「BIGLOBE SIM」の行方
BIGLOBE(ビッグローブ)が運営する「BIGLOBE SIM」では、NTTDoCoMoのネットワーク回線を借りてサービスの提供をしているのですが、それがKDDI(au)に買収されると現在契約しているユーザーはどうなるのか?
仮にKDDIにビッグローブが買収されても、いきなりBIGLOBE SIMが終了することにはならない思います。一番可能性が高いのがmineoやIIJのようにNTTDoCoMo、au両方の回線を使用したプラン(SIM)を提供する。
MVNO(格安SIM)業界でのBIGLOBE SIMのシェアは約8~9%。回線契約数は30万件以上となっています。※2016年前半
これだけのユーザー数を強引にKDDIグループ傘下のUQモバイル(UQコミュニケーションズ)に取り込む可能性も少なくありませんが、色々と調整にコストや時間も掛かりますから、BIGLOBEの現役ユーザーがそのまま継続利用できるように取り計らうと思います。
また、BIGLOBEではWIMAXの提供も行っていますが、これもUQ WIMAXとブランドを統合する可能性は低いと思います。
BIGLOBE(ビッグローブ)もかなり有名なプロバイダの1つですから、よほど赤字を垂れ流す事業でない限りは、部門の再編や統合でブランド廃止なんてことはないでしょう。
【追記】2016年12月8日付けで発表されたビッグローブ株式会社の「株主の変更に関するお知らせ」では
株主の変更に関するお知らせ
本日、当社の株主である日本産業パートナーズ株式会社が管理・運営・情報提供等を行う日本産業第四号投資事業有限責任組合などから、KDDI株式会社に当社の全株式を譲渡することが発表されました。
お客様に現在提供しているサービスやキャンペーンについては、従来と変わることなく、引き続きご利用いただけます。
これからも「ビッグローブ」をご愛顧くださいますよう、お願い申し上げます。
代表取締役執行役員会長兼社長 中川 勝博
■KDDI、ビッグローブ完全子会社化についてプレスリリース
→http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2016/12/08/2193.html
KDDIでは今後2017年1月末を目途に総額約800億円でビッグローブの株式を取得し完全子会社化する予定ですが、ビッグローブのサービス自体はは変らずそのまま提供していくそうです。【追記終了】
最近BIGLOBE SIMでは余ったデータ通信を分け合えるシェアSIMやiPhone6の取り扱いを始めるなど、大手携帯電話会社の高額な利用料金に対抗して、格安スマホの普及に力を入れている矢先に「KDDIが買収」という衝撃的な話が舞い込んできました。(※2016年12月時点 買収の話はまだ交渉段階ですが)
高止まりしている通信費(特にスマートフォンの利用料金)を値下げせずに、調子に乗っている大手の携帯電話会社の鼻っ柱をへし折るためにも、今後ともBIGLOBEには頑張ってもらいたいです。
■BIGLOBE SIMでは格安iPhone6の取り扱いをしています。
【駄文】MVNO(格安SIM)の未来
NTTDoCoMo含む大手の通信会社は総務省に言われて、今はしぶしぶMVNO向けの回線使用料を値下げしていますが、営業利益の悪化や設備投資資金の確保を理由に回線の使用料値上げ→MVNOも仕方なく利用料金の値上げ。という未来が見えます。
まだまだシェアは少ないですがMVNO(格安SIM提供会社)の存在は無視できなくなってきました。
将来的にMVNOの利用者が多くなりすぎて、それをNTT、KDDI、ソフトバンクの3社が脅威に感じるならばMVNOを全部買収して、格安スマホの利用料金を吊り上げればいいわけです。
MVNOの買収コストは現役ユーザーの携帯電話料金に転嫁すればいいだけなので、企業は何の苦労もしません。
通信企業がこのまま企業買収を続けて大きくなれば、今よりも政治的な発言力や権力が増し、もっと好き放題やる時代が来るかもしれませんね。